この記事で解決できる疑問
- CPUのスペック表の見方とは?
- CPUを選ぶときの基準は?
- 用途別のおすすめCPUとは?
CPUとは、簡単に言うと「パソコンの頭脳」です。このCPUの性能が優れていればいるほど高い処理能力を持ち、複雑な処理を行わせることができます。
ExcelやWordといったオフィスソフトであれば、現在販売されているほとんどのパソコンのCPU性能で十分に扱うことができますが、
オンラインゲームや動画編集、3DCGの制作、デザイン制作、機械学習などの作業をしたければ、どれでもいいというわけにはいきません。一定のレベル以上の優れたCPU性能を備えたパソコンが必要になります。
では、具体的にどのような用途に対してどの程度のCPU能力が必要になるのでしょうか?
この記事では、そのような疑問に答える形で、CPU性能の見方のポイントから具体的な選び方、用途別のおすすめまで紹介していきます。
CPUのスペック表の見方
この記事を読んでいる多くの人が、パソコンの購入を検討しているときに、以下のような表を見たことがあるのではないでしょうか?
商品名 | mouse DAIV 6N |
参考価格(税込み) | ¥279,800 |
OS | Windows 11 Home 64bit |
CPU | Core i7-12700H |
バッテリー駆動時間 | 約 11.5時間 |
グラフィックス | GeForce RTX 3060(Mobile) |
メモリー | 16GB (シングルチャネル) |
システムストレージ | 512GB (NVMe) |
ディスプレイ | 16.0型 液晶パネル (ノングレア) |
WEBカメラ | 200万画素 |
質量 | 約1.64kg |
この表の中で、core i7-12700Hというような型番の表記がされている部分が、そのパソコンに搭載されているCPUを表しています。しかし、実際には、この表記を見ただけではそのCPUがどれくらいの性能を持っているのか分かりません。CPUの性能を詳しく知るためには、以下のようなCPUのスペック表を見る必要があります。
以下では、まず、英数字の羅列である各型番が何を表しているのかを説明し、続いてCPUの性能を表す各用語について説明しています。
CPUの型番の見方
CPUといえば、Core i5やCore i7といったIntel製のCPUが有名ですが、最近ではRyzenなどのAMD製のCPUも大きなシェアを持っています。ここでは、それぞれのCPUの型番の見方を説明します。
CPUの2大ブランド
Intel(インテル)
AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)
Intel製CPUの型番の見方
例えば、Core i7-12700Hだと、以下のように要素を分解してみることができます。
ブランド名は「Core」がメインモデルで、その下位モデルに「Celeron」などのモデルがあります。また、グレードについては数字が大きいほど高性能で、世代については数字が大きいほど最新のモデルです。
シリーズは、各モデルの特徴を表しています。以下は、主要な各シリーズの特徴です。
インテルの各シリーズの特徴
- H :ノートパソコン対応。ハイパフォーマンスモデル。
- HK:ノートパソコン対応。ハイパフォーマンスモデル。オーバークロック可能。
- K :オーバークロック可能。
- F :グラフィックス非搭載。
- U :ノートパソコン対応。低消費電力モデル。
- G :内蔵グラフィックス強化モデル。
AMD製CPUの型番の見方
ブランド名は「Ryzen」がメインモデルで、その下位モデルに「AMD」などのモデルがあります。また、グレードについては数字が大きいほど高性能で、世代については数字が大きいほど最新のモデルです。
シリーズは、各モデルの特徴を表しています。以下は、主要な各シリーズの特徴です。
AMDの各シリーズの特徴
- H :ノートパソコン対応。ハイパフォーマンスモデル。
- HS:ノートパソコン対応。ハイパフォーマンスモデル。
- X :周波数アップモデル。
- F :グラフィックス非搭載。
- U :ノートパソコン対応。低消費電力モデル。
- G :内蔵内蔵グラフィックス強化モデル。
周波数(クロック数)とは?
CPUは、簡単な命令を使ってPCの動きを制御しています。この命令は信号(振動)の組み合わせで構成されており、その信号を1秒間にいくつ出せるのかを表す数値のことを周波数(クロック数)といい、数値が大きければ大きいほどより多くの命令をPCに対して出すことができます。
周波数(クロック数)の単位は、Hz(ヘルツ)で表され、例えば、5GHzの周波数のCPUだと、1秒間に50億回の信号をPCに対して出すことができる(1秒間に50億回振動している)ということを表しています。
これは、ヒトと比較するとそのすごさが分かります。ヒトの心臓は、平均的に1分間に60回程度振動しています。つまり、1時間に3,600回、1日で86,400回、1年で31,536,000回振動しています。ヒトの鼓動が50億回振動するためには、50億回÷31,536,000回で158年必要な計算になります。それをCPUは1秒間で行っているということです。
コア数・スレッド数とは?
コアとは?
コアとは、物理コアともいわれ、CPUが演算などの処理を行う演算・制御装置のことです。コアが1つのCPUをシングルコア、2つ以上のCPUをマルチコアといい、現在ではほとんどのCPUがマルチコアCPUとなっています。
マルチコアだと、それぞれのコアがそれぞれの処理を担当することができるので、シングルコアと比べて効率的に処理をすることができます。具体的には、コア①がExcel、コア②がブラウザ、コア③がPhotoshopといったように、それぞれのコアがそれぞれのアプリケーションを担当して処理ができるので、マルチタスクでも快適に作業をすることができます。
このコア数を見るときのポイントは、単純にコアの数がどれくらいあるかという点です。もちろん、コア数が多ければ多いほどPCは快適に動作することになります。
コア数別の呼称
- シングルコア:1コア
- デュアルコア:2コア
- クアッドコア:4コア
- ヘキサコア :6コア
- オクタコア :8コア
- デカコア :10コア
- ドデカコア :12コア
- ヘキサデカコア:16コア
スレッドとは?
スレッドとは、論理コアともいわれ、実際にPCが認識するコア数のことです。上述した物理コアを分割することで、実際に存在するコア数よりもPCが認識しているコア数(スレッド)は多くなります。
ここで注意する必要があるのが、物理コアと違いスレッド数は多ければ多いほど良いというわけではありません。あくまでCPUの性能を左右するのは物理コアです。
では、なぜスレッド数を増やす必要があるのでしょうか?
それは、PCの余力を効率的に使えるようにするためです。例えば、負荷の少ないwordやExcelのようなソフトを使うの物理コアをまるまるひとつ割り当てると、コアに余力ができます。スレッドを使うと、そのようにしてできた物理コアの余力を他の処理に割り当てることができるようになります。
CPUの選び方のポイント
パソコンを購入してから後悔しないためには、そのCPUはどれくらいの処理能力を持っていて、どのような用途に向いているのかを知ることが重要です。
上記では、クロック数やコア数といったCPUの性能を表す各要素についてみてきましたが、その数値の違いが実際にどれほどの処理能力の違いを生み出しているのかを比較するのは困難です。
そこで、CPUの性能の違いを見える化するための方法として、ベンチマークという数値が発表されています。そのベンチマークを発表している代表的な企業のひとつがPassMarkという会社で、例えば以下のようなベンチマーク値をCPU毎に集計をとって発表しています。
ベンチマークの例 | CPU性能(ベンチマーク) |
Core i9-12900HK | 28,917 |
Core i5-12600H | 22,704 |
この数値の見方は単純で、単に数値が高ければ高いほどそのCPUが高性能であるということを表しています。(もっと詳しいベンチマークの算出方法を知りたいという場合は、記事下部のQ&Aで説明しているのでそちらを参考にしてください。)
そして、実際にパソコンを購入するときは、ベンチマークの数値を参考に、用途に応じたCPU性能を備えたパソコンを選ぶというのが、失敗しない簡単な方法です。
用途別推奨ベンチマークスコア
- 20,000~ VR・CG制作、3D動画編集、機械学習(AI)、マイニング等
- 15,000~ 4K動画編集、エンコード等
- 12,000~ 2DCAD(AutoCAD、JWCAD)等
- 10,000~ 動画編集、エンコード(Adobe PremirePro)等
- 8,000~ デザイン(Adobe Photoshop、Illustrator)等
- ~8,000 office(Excel、Word)等
ノートパソコン向けCPU性能比較
以下では、PassMarkが公表しているベンチマークを利用して、各CPUの性能を比較しています。
※1. 型番をクリックすると各CPUの詳細スペックを確認できます。
※2. 用途アイコンにマウスを合わせる、または、タッチすると用途アイコンの説明を確認できます。
2023最新 | CPU性能(ベンチマーク) | おすすめの用途 |
Core i9-12900HK | 28,917 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i9-12900H | 28,784 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i9-11900H | 21,123 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i7-12800H | 24,597 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i7-12700H | 26,796 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i7-1260P | 17,085 | 4K2CVDDSOF |
Core i7-1255U | 13,723 | 2CVDDSOF |
Core i7-11800H | 21,064 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i7-1195G7 | 11,023 | VDDSOF |
Core i7-1165G7 | 10,460 | VDDSOF |
Core i7-1160G7 | 9,224 | DSOF |
Core i7-10750H | 12,174 | 2CVDDSOF |
Core i7-10510U | 6,736 | Of |
Core i5-12600H | 22,704 | VRCa動デOf |
Core i5-12500H | 21,862 | VRCa動デOf |
Core i5-1240P | 17,401 | 4K2CVDDSOF |
Core i5-1235U | 13,635 | 2CVDDSOF |
Core i5-11400H | 15,947 | 4K2CVDDSOF |
Core i5-11320H | 11,036 | VDDSOF |
Core i5-1135G7 | 10,014 | VDDSOF |
Core i5-1130G7 | 8,909 | DSOF |
Core i5-10210U | 6,329 | Of |
Core i3-1215U | 11,664 | VDDSOF |
Celeron N4100 | 2,435 | Of |
Celeron N4020 | 1,572 | Of |
Ryzen 9 6900HX | 24,890 | 3D4K2CVDDSOF |
Ryzen 9 6900HS | 24,026 | 3D4K2CVDDSOF |
Ryzen 7 6800H | 23,799 | 3D4K2CVDDSOF |
Ryzen 7 5800H | 21,306 | 3D4K2CVDDSOF |
Ryzen 7 5825U | 18,331 | 4K2CVDDSOF |
Ryzen 5 5600H | 17,145 | 4K2CVDDSOF |
Ryzen 5 5625U | 14,937 | 2CVDDSOF |
Ryzen 5 5500U | 13,157 | 2CVDDSOF |
Ryzen 5 3500U | 7,040 | Of |
Ryzen 3 5425U | 11,497 | VDDSOF |
Ryzen 3 5300U | 9,971 | DSOF |
AMD 3020e | 2,443 | Of |
インテル製のCPUであればCore i9シリーズ、AMD製であればRyzen 9シリーズが最高性能となっています。また、グレードだけでなく世代も重要で、同じでグレードのCPUでも、最新の世代であれば性能が大きく向上していることが分かります。例えば、「Core i7-12800H」と「Core i7-11800H」は、同じグレードかつ同じシリーズですが、より新しい世代の「Core i7-12800H」の方が、性能が約1.16倍も優れています。
ノートパソコンの利用をデザインや動画編集といったクリエイティブ系の用途で考えている場合は、インテルであれば第12世代のCore i5以上、AMDであればRyzen 5以上のCPUを搭載したモデルを選べば快適に作業できるでしょう。
デスクトップパソコン向けCPU性能比較
以下では、PassMarkが公表しているベンチマークを利用して、各CPUの性能を比較しています。
※1. 型番をクリックすると各CPUの詳細スペックを確認できます。
※2. 用途アイコンにマウスを合わせる、または、タッチすると用途アイコンの説明を確認できます。
2023最新 | CPU性能 | おすすめの用途 |
Core i9-13900KF | 59,801 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i9-13900K | 59,994 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i9-12900KF | 41,469 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i9-12900K | 41,576 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i9-12900 | 35,164 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i7-13700KF | 46,450 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i7-12700KF | 34,517 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i7-12700K | 34,746 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i7-12700F | 31,242 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i7-12700 | 31,113 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i7-11700K | 24,660 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i7-11700F | 21,201 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i5-12500 | 20,002 | 3D4K2CVDDSOF |
Core i5-12400F | 19,740 | 4K2CVDDSOF |
Core i5-12400 | 19,520 | 4K2CVDDSOF |
Core i5-11400 | 17,066 | 4K2CVDDSOF |
Core i5-1235U | 13,628 | 2CVDDSOF |
Core i3-12100T | 12,753 | 2CVDDSOF |
Core i3-12100 | 13,766 | 2CVDDSOF |
Core i3-1215U | 11,610 | VDDSOF |
Celeron G6900 | 4,464 | OF |
Ryzen 9 7900X | 52,101 | 3D4K2CVDDSOF |
Ryzen 7 7700X | 36,476 | 3D4K2CVDDSOF |
Ryzen 7 5700G | 24,599 | 3D4K2CVDDSOF |
Ryzen 5 5600G | 19,848 | 4K2CVDDSOF |
Ryzen 5 5500U | 13,156 | 2CVDDSOF |
Ryzen 5 4600G | 15,742 | 4K2CVDDSOF |
Ryzen 5 4500 | 16,154 | 4K2CVDDSOF |
Ryzen 3 4300G | 11,028 | VDDSOF |
ノートパソコン同様、デスクトップ向けのパソコンについても、インテル製のCPUであればCore i9シリーズ、AMD製であればRyzen 9シリーズが最高性能となっています。(※実際には、サーバーコンピューター向けのCPUなどもあり、サーバーコンピューター向けのCPUはより高性能なものも存在しています。)
デスクトップ向けのCPUについては、Core i3やRyze 3シリーズ程度でも十分に高性能で、比較的安価で高性能なPCを手に入れことができるのが大きな特徴で。また、デスクトップ向けCore i9などの上位モデルであれば、グラフィックボード性能にもよりますが、3DCG製作やマイニング、機械学習といったPCにかなりの負荷がかかる作業も快適に行うことができます。
デスクトップ向けCPUとノートパソコン向けCPUの違い
ノートパソコン向けCPUとデスクトップ向けCPUの大きな違いは、性能面と価格面です。
デスクトップ向けCPUの方が、より高性能でかつ安価に入手することができ、コストパフォーマンスにも優れています。
ノートパソコン向けCPUについては、ノートパソコンに搭載できるように小型化をする必要があり、デスクトップ向けCPUと比べると、どうしてもコストパフォーマンスが悪くなります。
デスクトップ | ノートパソコン | |
性能 | ||
コストパフォーマンス | ||
軽量・小型 |
パソコンの使い勝手でいえば、持ち運びができるノートパソコンが優れていますが、
持運びの必要がないのであれば、安価に高性能なパソコンを手に入れられるデスクトップを選ぶのもありですね。
Intel製CPUとAMD製CPUの違い
数年前までは、CPUといえばインテルというようにインテル1強時代が続いていましたが、今ではインテル製CPUとほとんど変わらない性能のCPUをAMDが開発・販売しています。例えば、同グレードのそれぞれのCPU性能を比較した表が以下になります。
CPU性能 | 価格 | |
Core i7-12700K | 34,746 | 約56,400円 |
Ryzen 7 7700X | 36,476 | 約48,000円 |
性能についてはほとんど変わらないことが見て分かります。また、価格についてもほぼ同様です。
上記のように、今ではインテル製CPUでもAMD製CPUでも大きな違いがあるわけではないので、パソコンの購入を検討しているときは、メーカーではなく、上のCPU性能一覧表などを利用して性能を正しく理解して購入するようにしましょう。
まとめ
この記事では、CPU性能の見方から選び方、各CPUの違い等を説明してきました。
最も重要な点は、目的の用途に応じた正しいスペックのCPUを搭載したパソコンを選ぶことです。目的・用途別のCPUベンチマークスコアを再掲しておくのでぜひ参考にしてください。
用途別推奨ベンチマークスコア
- 20,000~ VR・CG制作、3D動画編集、機械学習(AI)、マイニング等
- 15,000~ 4K動画編集、エンコード等
- 12,000~ 2DCAD(AutoCAD、JWCAD)等
- 10,000~ 動画編集、エンコード(Adobe PremirePro)等
- 8,000~ デザイン(Adobe Photoshop、Illustrator)等
- ~8,000 office(Excel、Word)等
用途・目的別のおすすめノートパソコンの紹介
用途や目的にあったおすすめのノートパソコンや選び方のポイントを知りたいという方は以下の記事を参考にしてください。
Q&A
PassMarkとは?
PassMarkとは、オーストラリアのPassMark Software社が提供するベンチマークを測定するためのソフトウェア及びサービスです。
ベンチマークの算出方法は?
CPU性能に関わる以下の項目のテスト結果を平均して算出しています。
- 整数の演算処理速度を図るテスト
- 並列データ圧縮速度を図るテスト
- 1秒間にいくつの素数を見つけることができるかを図るテスト
- 暗号化の処理速度を図るテスト
- 浮動小数点数の演算処理速度を図る速度
- 拡張命令によりどのくらい演算処理速度を改善しているかを図るテスト
- ソートアルゴリズムによりCPUが文字列をソートするのにかかる時間を図るテスト
- CPUが物理的な相互作用にかかる時間を図るテスト
- ひとつのCPUコアのみの処理速度を図るテスト
- 整数、浮動小数点、素数、ソートについてのテストスコアの複合平均値
BTOパソコンとは?
BTOとは、「Build To Order」の略称で、受注生産方式のをパソコンを意味しています。BTOでは、CPUやグラフィックボードの変更、メモリの増設などのニーズに応じたカスタマイズが可能で、現在多くのPCメーカーがこのBTO方式を採用しています。