- AIエージェント(Claude Code等)を使うPCに必要なメモリ容量(実測)
- 「並列数だけメモリが要る」が誤解である理由
- 「遅い」の原因がメモリなのか、CPUなのかを切り分ける方法
AIエージェント(Claude Code、Cursor、GitHub Copilot などのAIコーディングツール)を仕事で使う人が増えました。では、そういう使い方をするノートPCに、メモリは何GB必要なのでしょうか。
ネットでは「AI開発なら64GBは欲しい」といった記述を見かけます。筆者も最初はそう試算しました。そして、実測したら間違っていました。
結論は32GBです。筆者の実測では16GBは足りず、64GBはこの用途では使い道がありませんでした。
この記事では、実際にAIエージェントを終日動かしている業務PCの性能カウンタを測定して、その根拠を示します。筆者が調べた範囲では、日本語圏にこの種の実測データはまだほとんど公開されていません。
よくある誤解:「AIエージェントをN並列で回すなら、メモリもN倍要る」
筆者は最初、こう試算しました。
AIエージェントを15〜25並列で動かしたい。仮に1プロセスあたり600MBとすれば、600MB×25=15GB。加えてエディタとブラウザ。だから64GBは必要だろう——という机上計算です。
この試算は根本から間違っています。
実測すると、AIエージェント本体(claude.exe)は3セッション同時稼働で合計2,354MB(コミット)でした。並列でサブエージェントを動かしても、ローカルのプロセスは増えません。
理由は単純です。AIエージェントの「重い部分」は、手元のPCで動いていないからです。
| 動く場所 | 何が動くか |
|---|---|
| サーバー側(AI提供元) | LLMの推論——本当に重い処理はすべてここ |
| 手元のPC | APIクライアント、ファイルの読み書き、ツールの実行 |
少なくとも筆者が実測したClaude Codeでは、サブエージェントを10個立ててもサーバー側で10個の推論が走るだけで、手元に10個の重いプロセスが生まれるわけではありません。「並列数×プロセスのRAM」という掛け算は、そもそも成立しません。
補足:ローカルLLMは話が別です。OllamaやLM Studioでモデルを手元で動かす場合は、モデルの重みがそのままRAM(またはVRAM)に載るため、まったく別の要件になります。この記事が扱っているのはクラウドのAIエージェントを使う場合です。ローカル生成AI用のPCは生成AIパソコンの必要スペックを参照してください。
では、何がメモリを食っているのか【プロセス別実測】
実測しました。以下は、AIエージェント・エディタ・ブラウザ・文字起こしを同時に動かしていた、最も重い瞬間の値です。
| プロセス | プロセス数 | コミットサイズ |
|---|---|---|
| VSCode(エディタ) | 21 | 4.5 GB |
| Chrome(ブラウザ) | 41 | 4.3 GB |
| Python(faster-whisper large-v3・文字起こし) | 2 | 2.8 GB |
| Playwright(headless Chrome) | 11 | 1.0 GB |
| AIエージェント(claude.exe) | 3 | 2.35 GB |
| その他(OS等) | — | 約 5.6 GB |
| 合計コミット | 20.57 GB |
測定環境:Dell Vostro 3500/Core i5-1135G7(4コア8スレッド)/搭載RAM 7.73GB/Windows 11 Pro。値はタスクマネージャー等で確認できる「コミットサイズ」(確保された仮想メモリ量)です。
意外な結果でした。AIエージェント本体(2.35GB)より、VSCode(4.5GB)とChrome(4.3GB)の方が重い。
AIを使うPCのメモリが足りなくなる理由は、「AIが重いから」ではなく、AIを使う人の作業環境が重いからです。エディタを開き、ブラウザで調べ物をし、その横でAIを走らせる——この組み合わせが効いています。
測定上の注意:メモリの数字にはワーキングセット(実際に物理メモリに載っている量)とコミット(確保された量・Private Bytes)があり、別物です。同じclaude.exeでも、ワーキングセットでは約0.44GB、コミットでは約2.35GBと5倍以上違います。数字を比べるときは、必ず同じ指標で揃えてください(筆者はこれを混同して、一度誤った結論を出しました)。
「遅い」の原因が本当にメモリなのか、切り分ける
ここが重要です。「PCが遅い=メモリ不足」とは限りません。ディスクかもしれないし、CPUかもしれない。そこで、メモリ・ディスク・CPUを同時に測って切り分けました。搭載メモリ7.73GBのPCでの実測です(Windowsの性能カウンタを30秒間隔で記録)。
| 時刻 | コミット | 空きRAM | page reads/sec | ディスク読み | ディスク待ち行列 | CPU |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21:07:47 | 17.24 GB | 815 MB | 966.9 | 0.308 ms | 0.00 | 17.3% |
| 21:08:23 | 17.34 GB | 842 MB | 263.6 | 0.371 ms | 0.00 | 29.1% |
| 21:08:59 | 17.25 GB | 881 MB | 567.2 | 0.336 ms | 0.00 | 16.4% |
読み方はこうです。
| 容疑者 | 実測 | 判定 |
|---|---|---|
| ディスク(SSD) | 読み0.3ミリ秒・待ち行列 0.00 | シロ。誰も待っていない |
| CPU | 使用率16〜29% | シロ。余っている |
| メモリ | page reads/sec が毎秒264〜967回 | クロ |
page reads/sec は、メモリに載りきらなかったデータをディスクから読み直した回数です。ディスクは待っておらず、CPUは余っている。それでも毎秒数百回、メモリの中身をディスクから読み直している——これがメモリ不足の実像です。
しかもこの数字はブラウザを閉じた状態のものです。VSCode(5,976MB)とAIエージェント(2,943MB)の2つだけで約8.9GB。普段どおりブラウザを開けば、ここにさらに4GB前後が乗ります。
※自分のPCで再現する場合は、性能カウンタの「\Memory\Page Reads/sec」「\PhysicalDisk(_Total)\Current Disk Queue Length」「\Processor(_Total)\% Processor Time」を同時に記録してください。
結論:AIエージェント用途のメモリは32GB
実測から導くと、こうなります。
| 容量 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 8GB | 論外 | 実測17.3GBの半分以下。常時ページング |
| 16GB | 不足 | 実測17.3GBを下回る。ブラウザを開いた時点で足りない |
| 32GB | 適正 | ピーク20.57GBに対し十分な余裕 |
| 64GB | 過剰 | この用途では使い道がない |
64GBが必要になるのは、動画編集、多数の仮想マシン、ローカルLLMの実行といった用途です。クラウドのAIエージェントを使う分には、そこまで要りません。
正確を期すために:「コミット20.57GB=物理メモリが20.57GB必要」と読むのは誤りです。コミットには予約分が含まれます。正しくは「16GBではページングが起きる。32GBならページングを大幅に減らせる蓋然性が高い」であって、「32GBにすればすべて解決する」ではありません。CPU起因の遅さ(次の章)は残ります。
メモリを増やしても直らないこと
正直に書きます。メモリは万能ではありません。
上の測定でCPU使用率は16〜29%でした。CPUは余っています。逆に言えば、CPUを使い切る種類の作業は、メモリを増やしても改善しません。
代表例がローカルでの文字起こしです。同じPCでfaster-whisper(large-v3モデル)を回すと、41分の音声の文字起こしに113分かかりました(0.36倍速)。これはCPUの処理能力による制約なので、メモリを32GBにしても変わりません。高速化にはNVIDIA製GPUが必要です。CPUとGPUの実測差は「Whisperの文字起こしはCPUとGPUで何倍違う?」で検証しています。
逆もまた然りです。この実測のとおりCPUが余っているなら、AIエージェント用途のために高価な上位CPUへ投資する優先度は低いということです。予算はメモリ(とSSD容量)に寄せる方が合理的です。CPU性能が効く用途かどうかはCPUの選び方ガイドで確認できます。
買うときの注意(この市況では特に)
メモリ32GBの機種を選ぶとき、いまの時期は2点だけ気をつけてください。
① 32GBを「安く積める機種」を選ぶ。メモリ価格の高騰で、BTOの増設オプションが大幅に値上がりしています。2026年7月時点の実例では、あるBTOメーカーは8GB→32GB化に+75,900円(最安構成でも22万円超)、別のメーカーは32GB構成が14万円台でした。同じ32GBでも機種の選び方で8万円以上変わります。
② メモリを増設できる機種かどうかは、仕様表では分からないことがある。基板直付け(オンボード)で増設不可の機種があります。また、仕様表に「最大64GB」とあるのに、実際の注文画面には64GBの選択肢が存在しない機種も確認しました。購入前に必ずBTOカスタマイズ画面・メーカーの型番別スペックシートで確認してください。具体的な調べ方は「買う前の調べ方の記事」を参照してください。
なぜここまでメモリが高いのか、待てば下がるのかは、メモリ価格高騰の実データ記事で一次情報つきで解説しています。
よくある質問
AIエージェントを使うPCに、メモリは何GB必要ですか?
実測では32GBが適正でした。AIエージェント・エディタ・ブラウザを同時に動かした状態で、メモリ要求(コミット)は17〜20GB程度です。16GBでは不足し、64GBはこの用途では使い道がありません(64GBが必要になるのは動画編集・多数の仮想マシン・ローカルLLM実行などの用途です)。
AIエージェントを並列で動かすと、メモリも並列数だけ必要ですか?
いいえ。LLMの推論はAI提供元のサーバー側で実行されるため、手元のPCにあるのはAPIクライアントだけです。実測では、3セッション同時稼働で合計2,354MB(コミット)でした。並列数を増やしても、ローカルのメモリ使用量は線形には増えません。
AIエージェント本体がメモリを一番食うのですか?
いいえ。実測ではAIエージェント(2.35GB)より、VSCode(4.5GB)とChrome(4.3GB)の方が重い結果でした。メモリが足りなくなるのは、AIが重いからではなく、AIを使う人の作業環境(エディタ+ブラウザ+AI)を同時に開くためです。
メモリを増やせばPCは速くなりますか?
遅さの原因がメモリなら改善します。原因がCPUなら変わりません。実測では、文字起こし(faster-whisper)はCPU性能が制約で、41分の音声に113分かかっていました。これはメモリを増やしても改善しません。原因の切り分けには、page reads/sec(メモリ起因)、ディスクの待ち行列(ディスク起因)、CPU使用率(CPU起因)を同時に見る必要があります。
ローカルでLLMを動かす場合は何GB必要ですか?
この記事の対象外です(本記事の実測はクラウドのAIエージェント利用時のもの)。ローカルLLMはモデルの重みがそのままメモリやVRAMに載るため、まったく別の要件になります。生成AIパソコンの必要スペックを参照してください。
まとめ
クラウドのAIエージェントを使う業務PCのメモリは、実測ベースで32GBが適正です。重いのはAI本体ではなく「エディタ+ブラウザ+AI」の同時使用で、16GBでは実測値(17〜20GB)に届きません。一方、LLMの推論はサーバー側で走るため、並列数を増やしてもローカルのメモリは線形には増えず、64GBはこの用途では過剰です。メモリはいま高騰中のため、32GBを安く積める機種を実際の注文画面で確認して選んでください。
⚡ 次に読む
メモリはいま1年で5〜6倍という異常な高騰の最中です。「待てば下がるのか」を一次情報で検証した記事もあわせてどうぞ。
本記事の実測は2026年7月時点・筆者の業務PC(Dell Vostro 3500/Windows 11 Pro)での測定値です。測定条件が異なれば値は変わります。価格に言及した箇所は2026年7月17日時点の各公式サイト実取得値です。
